「特許制度」は「発明」を保護する制度であるのに対し、「実用新案制度」は「考案」を保護する制度です。発明も考案も「技術的なアイデア」という点では共通しています。しかし、特許権を取得できる発明と実用新案権を取得できる考案とでは、以下の3点で大きく異なります。
第1の違いは「高度性の有無」です。特許法は発明に高度の技術性を備えていることを要求しますが、実用新案法は考案に高度の技術性を備えていることを要求しません。つまり、特許庁で実用新案登録を行う際、その技術に高度性は要求されないのです。
第2の違いは「物品性の有無」です。特許制度が保護する発明には、爪先の布地を二重にして爪先を破けにくくした新型靴下Aといった物の発明、新型靴下Aの縫い合わせを検査する方法Bといった単純方法の発明、新型靴下Aの縫製方法Cといった生産方法の発明という3種類の発明があります。
このように、特許は実用新案のように物品に関する技術でなければならないという要件がありませんので、物の発明以外の単純方法や生産方法に関する発明も、特許権を取得することができるのです。
これに対し、実用新案制度では、片方が失くならないようにお互いをくっつけるために磁石を取り付けたヘアピンといった物品に関する考案でなければ、特許庁で実用新案登録を行うことができません。このようなヘアピンの検査方法のような単純方法に関する技術やヘアピンの製造方法のような生産方法に関する技術は、実用新案制度では保護されないため、特許制度によってのみ保護されます。
また、物品の形状・構造・組み合わせに関する考案でなければ実用新案登録を行うことができません。例えば、新規な薬品の化学構造に関するアイデアといった一定の形態を備えていない考案も、実用新案権を取得することができないため、特許出願を行わなければなりません。
第3の違いは「進歩性のレベル」です。特許権も実用新案権も、その発明や考案がその分野の技術者にとって従来技術から簡単に思い付くことができないものであるという進歩性を備えていないと取得できません。
しかし、実用新案における進歩性のレベルは、特許における進歩性より低いレベルでよいとされています。つまり、その分野の技術者が従来技術から極めて簡単に思い付くことができなければ、実用新案権を取得できます。