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実用新案の保護対象

実用新案の保護対象|中川特許事務所|東京・神奈川・横浜の考案・技術・アイデアの実用新案登録をするための特許庁への手続の代行、実用新案権に関する調査および管理、契約仲介、紛争解決、輸入差止を代行する神奈川県横浜市の弁理士事務所

特許事務所は、考案・技術・アイデアに関する実用新案出願・申請から実用新案権の登録・取得までの特許庁における手続を代理・代行する弁理士事務所です。当特許事務所は、実用新案登録に関する業務として、発明調査・権利管理・契約仲介・侵害鑑定・紛争解決・輸入差止・相談業務も実施しています。実用新案につきお気軽にご相談・お問い合わせください。

考案の4つの要件

実用新案法」は、実用新案権によって考案を保護するための法律です。そうすると、特許庁に出願を行って実用新案登録を行うためには、まず、お客様のアイデアが実用新案法の定める「考案」でなければなりません。法律上の考案に該当するためには、以下の3つの要件を全て満たしている必要があります。

考案の1つ目の要件は「自然法則を利用していること」です。「自然法則」とは、自然界において生じるさまざまな現象の間に成立していることが、経験的に見いだされる一般的な原則のことです。例えば、化学変化が起きてもその前後で物体の総質量は変わらないとする「質量保存の法則」のような自然科学上の法則はもちろん、「丸太は水に浮かぶ」といった各種の自然現象も自然法則に該当します。

一方、自然法則に該当しないものの例としては、数学上の公式のような数学上の法則、スポーツやゲームのルールのような人為的な取決め、商品の購入意欲を起こさせるような広告宣伝手法といった人間の心理法則などが挙げられます。

また、自然法則の「利用」とは、なんらかの自然法則を利用することで、一定の技術的な作用効果を発揮することです。したがって、以下のようなものは、自然法則を利用していないため、実用新案法上の考案には該当しません。

自然法則それ自体
例)水は高い所から低い所へ流れるといった自然現象そのもの
自然法則に反するアイデア
例)エネルギーを加えなくても動き続けるエンジンといった永久機関
(エネルギー保存の法則に反するアイデア)
自然法則以外の法則を利用するアイデア
例)人為的な取り決めを利用したアイデア
(新しいルールに基づいた新規なスポーツやゲーム)
実用新案の保護対象|中川特許事務所|東京・神奈川・川崎の考案・技術・アイデアの実用新案登録をするための特許庁への手続の代行、実用新案権に関する調査および管理、契約仲介、紛争解決、輸入差止を代行する神奈川県横浜市の弁理士事務所

考案の2つ目の要件は「技術的思想であること」です。「技術」とは、一定の目的を達成するための具体的な手段のことです。技術であるためには、同じ条件の下であれば同じ結果が得られるという「反復可能性」を備えている必要があります。ただし、反復可能性は、その結果を再現できる確率(再現率)が100%であることを要求するものではありません。

したがって、たとえ再現率が低くても、確実にその結果が得られるのであれば、反復可能性が認められます。例えば、御木本幸吉氏が発明した真珠の養殖法(特許2670号)は、最初の内は、加工した真珠貝の1~2%からしか真珠を採れなかったというのは有名な話です。したがって、以下のようなものは、技術的思想ではないため、実用新案法上の考案には該当しません。

技能・技倆・こつ・奥義
例)スープを飛び散らせないようにするラーメンの食べ方
情報の単なる提示
例)収録されている音楽にのみ特徴があるCD
単なる美的創造物
例)版画や写真といった芸術作品
未完成発明
例)瞬間移動装置のように具体性がなく、単なる願望に過ぎないもの
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考案の3つ目の要件は「創作性があること」です。「創作」とは、人間がその精神的な活動を通じて、新たに何かを創り出すことをいいます。よって、新種の鉱物・植物・動物を見いだしたといったように、既に存在しているものを見つけ出す「発見」は、考案に該当しません。

例えば、磁力を備えた新たな物質を発見しても、それ自体は発見にすぎないため、実用新案権を取得することはできません。一方、そのような磁力を備えた新規な物質を利用して、お互いをくっつけて失くならないようにしたヘアピンのアイデアは、実用新案権を取得することができます。

上記の3つの要件は、発明の4つの要件と同じです。しかし、考案は、発明の4つ目の要件である「高度性があること」を要件としていません。この要件は、技術には様々なレベルのものがありますが、高度の技術は特許法で保護し、低度の技術は実用新案法で保護するという2つの法律の役割分担を図っているのです。したがって、発明より「比較的簡単な技術」でも、実用新案権を取得することができます。

考案の3つの種類

上記のような実用新案法が保護する考案には、以下の3種類の考案があります。実用新案法は、比較的簡単な技術を保護するための法律であるため、「物品に関する考案」を保護の対象にしています。物品とは、以下のような形状・構造・組み合わせを備えることができる物のことです。

物品の形状に関する考案
外部から観察できる物品の外形に関する考案のことです。
例)風が吹いても倒れないように重心を低い位置においた形状の自転車
物品の構造に関する考案
考案を構成する部品や材料などについての有機的な連結や結合に関する考案のことです。
例)片方が失くならないようにお互いをくっつけるために磁石を取り付けたヘアピン
物品の組み合わせに関する考案
本来は独立した形態を備える複数の物品からなるものの、それらを使用する際にお互いに関連し合って新しい使用価値を生じさせる考案のことです。
例)新しいカードゲームに使用するカードのように、同じ種類の物品の組み合わせもあれば、新しいボードゲームに使用する駒と盤のように、異なる物品の組み合わせもあります。

一方、以下のようなものは、物品に関するものではないため、たとえ特許庁に出願を行っても実用新案登録を行うことができません。これらは、特許法における発明として保護されることになります。

「物」とは全く別のカテゴリーに属する考案
例)磁石付きヘアピンの磁石の取り付け具合を検査する方法、ヘアピンに磁石を取り付けて磁石付きヘアピンを製造する方法
「物」であっても一定の形態を備えていないもの
例)新規な化学物質の化学構造に関するアイデア
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実用新案登録要件

上記のような実用新案法が規定する考案の要件を満たすだけでは、特許庁に出願を行っても、有効な実用新案権を取得することはできません。有効な実用新案権を取得するためには、実用新案法が定めるさまざまな「実用新案登録要件」を満たす必要があります。以下では5つの主な要件についてご説明します。

実用新案法は、特許法とは異なり、特許庁の審査官が審査を行わずに実用新案登録を行う制度です。しかし、実用新案登録の要件を満たしていないと、実用新案権を取得することができたとしても、特許庁の無効審判で権利が無効になってしまったり、他社に権利を行使することが制限されたりしてしまいます。

1つ目の実用新案登録要件は「産業上利用可能性」です。これは、その考案が広い意味での産業の分野で事業としての実施ができることです。ここでいう「産業」とは広い意味に解釈されており、製造業だけでなく、鉱業、農業、漁業、運輸業、通信業、金融業、またはサービス業なども含まれます。

ただし、考案が実際に産業上利用されている必要はなく、近い将来産業上利用される可能性があれば十分です。つまり、実際にその考案を利用して製品を作っているといった必要はないのです。以下の2つの考案は、産業上利用可能性がないため、実用新案権を取得することができません。

その考案が事業として利用できない考案
例)自分の眉毛を上手にカットする装置のような個人的にのみ利用される発明、あるいは学術的または実験的にのみ利用される発明
実際上明らかに実施できない考案
例)世界中に糸を張り巡らせて世界中の人々と会話ができる糸電話
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2つ目の実用新案登録要件は「新規性」です。新規性とは、実用新案登録出願時における考案の客観的な新しさのことです。新規性があるか否かは、特許庁に実用新案の出願書類を提出した何時何分まで考慮して判断されます。

また、新規性があるか否かは、日本国内外で生じた事実を基準として判断されます。例えば、日本で開催された博覧会に出展された考案はもちろん、米国で開催された博覧会に出展された考案にも新規性はありません。日本では、以下の4つの考案が新規性のない考案として取り扱われています。

公然知られた考案(公知考案)
不特定の人に秘密でないものとして知られた考案のことです。
公然と実施された考案(公用考案)
不特定の人に秘密でないものとして実施されている考案のことです。
頒布された刊行物に記載された考案(刊行物公知考案)
新聞・雑誌・特許公報など各種の情報伝達媒体に掲載されている考案のことです。
電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった考案(インターネット公知考案)
インターネット上に公開されているウェブサイトに掲載されている考案のことです。

3つ目の実用新案登録要件は「進歩性」です。進歩性とは、その考案が属する技術分野の専門家であっても、実用新案の出願時における技術水準から極めて簡単に考案を行えないことです。進歩性があるか否かも、上記の新規性と同様に、実用新案の出願時を基準として判断され、日本国内外で生じた事実を基準として判断されます。

特許要件と実用新案登録要件はよく似ていますが、進歩性の要件については、実用新案登録に当たっては特許よりも低いレベルの進歩性を満たしていればよいとされています。これは実用新案法が比較的簡単な技術を保護するための制度だからです。

進歩性があるか否かは、その発明の技術分野における通常の知識を有する者(当業者)を基準として判断されます。例えば、先ほどの磁石付きヘアピンの考案でいえば、ヘアピンの製造技術者を基準として判断されます。

そして、この当業者が新規性のない考案に基づいて通常の創作力を発揮することで、その考案を簡単に思い付けたか否かを基準として、特許庁に出願された考案に進歩性があるか否かが判断されます。

例えば、ヘアピンの製造技術者が、従来のヘアピンから先程の磁石付きヘアピンを簡単に思い付ける場合、磁石付きヘアピンは進歩性がないため実用新案権を取得することができません。一方、従来のヘアピンから磁石付きヘアピンを簡単に思い付けない場合、磁石付きヘアピンは進歩性があります。

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4つ目の実用新案登録要件は「先願主義」です。これは、同じ技術について2件以上の実用新案登録出願または特許出願があった場合、最も早く特許庁に出願を行った者に権利を与えるという考え方です。

例えば、磁石付きヘアピンについて、X社が実用新案を出願した翌日に、Y社も実用新案を出願した場合は、X社が磁石付きヘアピンの実用新案権を取得することができます。また、X社が実用新案を出願した日と同じ日にY社も実用新案を出願した場合には、X社もY社も磁石付きヘアピンの実用新案権を取得することはできません。

5つ目の実用新案登録要件は「不登録事由」に該当しないことです。日本では、アヘン吸引具や偽札製造機のように、公序良俗(社会秩序および社会道徳)、または公衆衛生(国民の健康)を明らかに害するおそれがある考案は、実用新案権を取得することができないとされています。

実用新案権の主体

実用新案権を取得するためには、特許庁実用新案を出願した者がその考案について「実用新案登録を受ける権利」を保有していなければなりません。この権利は、考案者考案を完成させてから、出願人が実用新案権を取得するまで、その考案を仮に保護するための権利です。

実用新案登録を受ける権利は、考案者が考案を完成させたのと同時に、考案者に自動的に発生する権利です。よって、実用新案登録を受ける権利を取得するために、特許庁に対する申請や出願といった官公庁における手続などを行う必要はいっさいありません。

考案者」とは、考案を創作する行為に現実に加わった者のことをいいます。よって、以下のような者は、考案に関わっているものの、考案を創作したとはいえないため、考案者には該当しません。

法人
例)会社、研究所、官公庁、組合、その他の各種団体など
補助者
例)考案を完成させるための実験や設計を手伝ったにすぎない者
助言者
例)考案者である学生に対して考案の簡単なアドバイスを行った教員
指示者
例)考案者である部下に対して考案することを命じた上司
後援者
例)考案者に対して考案に必要な資金や設備を援助したにすぎない者
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ただし、実用新案登録を受ける権利は売買や相続といったかたちで、他人に移転することができます。したがって、考案者でない者が実用新案登録出願を行う場合には、考案者からこの権利を譲り受ける必要があります。企業内で社員が考案を行った場合であっても、企業はその社員から実用新案登録を受ける権利を譲り受けなければなりません。

特許事務所弁理士は、上記のような考案について、特許庁に申請を行い、実用新案権を取得する手続を代理することを専門にしています。実用新案登録ができる考案か否かについて何かご不明な点などがございましたら「弁理士への質問相談」よりお気軽にお問い合わせください。

次の「実用新案のメリット」では、特許庁に実用新案の出願を行い実用新案権を取得するメリットについて、当特許事務所の弁理士がご説明しています。あわせてご参照ください。

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