「著作権法」は、著作物、実演、レコード、放送、有線放送などさまざまなものを保護しています。著作権や著作者人格権によって保護されるためには、お客様の作品が著作権法の定める「著作物」でなければなりません。著作物に該当するためには、以下の4つの要件を全て満たしている必要があります。
著作物の1つ目の要件は「思想または感情が含まれていること」です。思想や感情とは私たちの「考えや気持ち」のことです。要するに人間の精神的な活動によって生み出されたものでなければなりません。よって、以下の5つのものは思想や感情が含まれていないため、著作権法上の著作物に該当しません。
- 自然物
- 例)植物、動物、鉱石など
- 人間以外の動物が作成したもの
- 例)チンパンジーが描いた絵
- コンピュータが自動的に作成したもの
- 例)ソフトウェアがランダムに作成した楽曲
- 人間が無意識のうちに作成したもの
- 例)カメラマンが転んだ際にシャッターが切れて撮影された写真
- 定型的なフォーマット
- 例)手紙の書き出しに「拝啓」と記述すること
著作物の2つ目の要件は「表現されていること」です。著作物というためには、他人が作品を感じ取れる程度にそれが具体的になっていなければなりません。逆にいうと、作品が作者の頭の中にしか存在しない状態では著作権法上の著作物とはいわないのです。
一方、著作権法は著作物の要件として表現が何らかの媒体に記録されていることを要求していません。よって、CDなどに録音されている音楽も、録音されなかった即興音楽も著作物に該当します。
また、著作権法は、著作物の要件として作品が完成されていることを要求していません。例えば漫画でいうと、本に掲載されている完成した漫画も、制作途中のラフスケッチも著作物に該当します。
そして、作品の一部であっても著作物に該当する場合があります。例えば4コマ漫画でいうと、4コマからなる作品全体が著作物に当たるのは当然ですが、1コマだけ抜き出した場合でも著作物に当たる場合があります。
一方、アイデアは著作権法では保護されません。例えば漫画でいうと、腕白に描かれているキャラクターの絵は著作物に当たりますが、ガキ大将といったキャラクターの性格は著作物に当たりません。
著作物の3つ目の要件は「創作性があること」です。要するに作者の「個性」が作品に現れていることです。よって、作者がプロであるかアマであるか、大人であるか子供であるかは、著作権法上の著作物に当たるかどうかを判断する際にまったく問題にならないのです。
一方、画集に掲載するために絵画を正確に撮影した写真のような「既存の著作物の模倣」、円の面積の求め方のような「不可避的な表現」、あるいは履歴書の定型的なフォーマットのような「ごくありふれた表現」は、創作性がないため著作物に該当しません。
著作物の4つ目の要件は「文芸・学術・美術または音楽の範囲に含まれること」です。これは著作権法で保護される著作物とは、広く文化的な作品であることを意味しています。したがって、4つの分野のうちのどれに含まれるかを検討する必要はありません。そうすると、特許法・実用新案法・意匠法で保護されるような「実用品」や「工業製品」は著作権法では保護されないのです。