特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権・育成者権・不正競争防止法上の権利などの「知的財産権」を侵害する偽物・コピー商品・模倣品・偽ブランド商品・海賊版の輸入や輸出は、「税関」による取締りの対象です。しかしながら、日本に輸入される貨物または日本から輸出される商品は膨大ですから、このような「知的財産侵害物品」を税関が自ら発見することは困難です。
そこで、お客様にて知的財産侵害物品が輸入されたり輸出されたりする具体的なおそれがあることを知っている場合は、税関に「輸入差止申立」や「輸出差止申立」を行って情報を提供しておくことが効果的です。輸入差止と輸出差止はほぼ同じ制度なので、ここでは輸入差止にまとめてご説明します。
輸入差止申立を行うには、以下に説明する5つの要件を満たすこと、ならびに税関への申立書および所定の添付書類を提出することが必要です。
税関は全国に9カ所ありますが、いずれかが書類を受理すればすべての税関が受理したものと取り扱われますから、いずれか1カ所の税関に書類を1部提出すれば足ります。また、輸入差止申立を行うに当たり、税関に手数料を支払う必要はありません。
- 権利者であること
- 例)自らが商標権を保有していることを申立書の権利者の欄への記載や商標原簿などで明らかにします。なお、申立ては商標権者から登録商標の使用を許諾されたライセンシーなども行えます。
- 権利の内容に根拠があること
- 例)申立書への登録番号や登録日の記載および商標公報などの提出で、その商標が特許庁に商標登録されていることを明らかにします。なお、特許庁に出願中の段階では申立てを行うことができません。
- 侵害の事実があること
- 例)侵害の事実とは偽物が実際に輸入されている場合だけでなく、偽物の輸入が見込まれる場合も含まれます。よって、模倣品の輸入を未然に防ぐことができるのです。
- 侵害の事実を確認できること
- 例)申立書の侵害物品と認める理由の欄に偽物の商標が登録商標に類似する旨を記載するなどして明らかにします。また、弁理士の鑑定書などを侵害の事実を疎明するための資料として提出します。
- 税関で識別できること
- 例)税関が検査をする際に侵害物品を見分けるための情報として、本物と偽物の着色や形状の違い、あるいは商標の記載の仕方の違いなどを説明した識別ポイントに関する資料を提出します。